カフェ店舗のオーナー(個人、法人)が、 店舗の空いている時間、つまり営業時間外や定休日を利用して、 店舗の一部を間貸しし、別の利用者(個人、法人)がそれを間借りするサービス、業態のことを「シェアカフェ」と言います。
少し前は「レンタルカフェ」という呼び名が一般的でしたが、この数年来「シェアハウス、シェアオフィス」といった表現が 広まるにつれ、「シェアカフェ」と表現されるようになってきています。「シェアレストラン」とも呼ばれています。
この原稿を書いている2020年夏の時点で、双方の言葉がほぼ同義語で使われることも多く、表現が混在している状態です。
厳密には違いがないとも言えますが、昨今の使われ方として、
不特定多数の事業者に一時的に間貸しするサービス=レンタルカフェ
特定の事業者と契約して継続的に間貸しするサービス=シェアカフェ
という捉え方の表現が増えてきているように思われます。
サービス・業態の内容や注意すべき点などはどちらもほぼ同じですので、この場では「シェアカフェ」という表現で統一します。
賃貸物件の店舗は、お店をそのまま別の人に使わせて家賃収入を得ると「転貸借(てんたいしゃく)」に当たり、契約違反となります。
シェアカフェの場合、あくまでの店舗と設備の一部を一定の時間だけ貸し出すレンタル契約となり、利用費の収入は家賃収入には当たらず、転貸借とはならないと一般に判断されています。
ただし、物件の家主に何も話をせずに始めるのは道義的に問題があり、トラブルに発展する可能性がありますので、貸し手側で事前に家主へ報告と相談はすべきでしょう。
また、レンタル契約の場合、あくまでも借り手の利用者は一時的に店舗を利用する立場で、責任者は貸し手ですので、利用者が食中毒などのトラブルを起こした場合は、店舗オーナー側の責任が問われますので注意が必要です。
貸し手側のお店のオーナーのメリットは、なんといっても、お店の空き時間を使って収入が得られることです。
本来、お客様がご来店される見込があれば、1日でも1時間でも長い時間店舗を営業をしたほうが、当然ながら売上は伸びます。特に賃貸物件を借りている場合、賃料は月額固定で、お店の営業していない日や時間にも費用が発生しますので、なるべく長時間お店を稼働させたい、という気持ちは多くの店舗オーナーさんに共通する思いでしょう。かつて24時間営業のチェーンレストランが多かった理由のひとつはそこにあります。
しかしながら個人店の場合、オーナーが従業員を兼ねて少ないスタッフで営業するお店が多いですから、毎日長時間営業を続ける事は難しい。無理なく長いあいだ続けていくことを考ええれば、週に1~2日の定休日を設け、毎日の営業時間もそれほど長くない時間に設定しているお店が多いのではないかと思います。
この店舗が稼働していない時間帯や定休日は、売上の発生しない「無益」な時間ですが、この時間をシェアカフェとして貸し出して利用料を得ることができれば「有益」な時間と化します。
しかもその利益を得るにあたって、自分や自店のスタッフは働く必要がありません。貸し出し中の水光熱費を除けば、貸し手側のコストはほぼかからないのです。後述するデメリットの危険性はありますが、それを想定して対応をするのであれば、シェアカフェは収益を伸ばすビジネスチャンスと言えます。
初期投資や煩雑な手続きなしに、一時的ながらも自分のお店を開業できるのが、借り手側の最大のメリットでしょう。
自分でお店を構える開業には、物件探しから借り入れ、内装工事や厨房機器の購入、営業許可の取得や消防検査など、多額の投資、作業が必要です。
シェアカフェでは既に営業している店舗を借りるので、これらの手続を一切無視してお店の営業をすることができます。
また当然ながら、自分でお店を構えて開業するにはリスクがあります。
借入や投資をして労力をかけても、それに応じた売上や利益が確保される訳ではなく、結果として投資を回収できないまま資金が続かなくなり、短期で撤退する店舗も少なくはないのです。
しかしシェアカフェを借りて営業すれば、売上が不調で経営が難しいと思った時点ですぐ営業を終了することも可能で、少ないリスクでお店を営業することができます。
この仕組みを使って、トライアル的な利用も可能でしょう。
たとえば将来的には自分のお店を構えて開業することが目標で、まだお店を自分で運営することに自信がない人が、シェアカフェを借りて短期間営業をして運営の経験を積み、自信を付けるというやり方。
あるいは、自分の考える新しい方向性のカフェや商品がお客様に受け入れられるかどうか、シェアカフェを借りてテスト的に営業をしてみるというやり方。
大きなリスクなしに色々試せることは実に魅力的です。
貸し手側にとっては大事な店舗や備品に破損や紛失が生じないかが一番の不安です。借り手側はもちろん借り物として大事に扱う意識はあるでしょうが、実際に店舗の設備を利用して営業するわけですから、内装や機器、備品などが汚損、破損、紛失するリスクはあります。
貸し手は借り手から返却された後でチェックができるように設備や備品のチェックリストを作成する必要があるでしょうし、仮に汚損や破損、紛失が生じた場合の賠償については、事前に文書で明確にする必要があるでしょう。
また、冒頭にも述べましたが、借り手側が食中毒を起こしてしまうなどのトラブルになった場合、店舗所有者であるオーナーの責任が問われます。こちらについても、有事の賠償責任等について事前に文書化したり、保険をかけておく必要があると思われます。
借り手側としては、すでにある店舗を借りるため、その現在のレイアウトや内装等に合わせて営業せざるを得ず、自分が理想とする営業スタイルの表現が難しいことが大きな問題かと思います。
もちろん資材の持ち込み等で自分のイメージに多少なりと近づけることは可能でしょうが、妥協せざるを得ない部分は多いでしょう。
当然のことながら、借りる店舗がカフェであればカフェ業態、パン屋ならベーカリー業態というように、店舗と類似の業態への親和性が最も高く、異なる業態を展開しようとすれば実現のハードルは高くなります。
店舗の厨房機器や設備によっては、自分が作りたい商品が作れない可能性もありますので、借りる検討をする際には自分が必要とする製造環境があるかの確認をしてください。
また、本来の店舗の空き時間を活用する形のため、自分の希望通りの営業時間が設定できるとは限らない点もあらかじめ理解しておく必要があるでしょう。
なおシェアカフェでは、営業許可も借りる店舗のものを使う形となるので注意が必要です。
パンや菓子の販売に必要な「菓子製造業許可」
店内イートインの「飲食店営業許可」
このどちらかしかない店舗の場合、シェアカフェでも同じ業態の営業しかできません。たとえば「飲食店営業許可」しか取得していない店舗をシェアカフェで借りた場合は、ケーキやパンの製造販売はできないことになります。
知人や友人など、相互理解のある相手と貸し借りをする場合は別として、細かい条件を整備して契約を締結したり、不備の場合の保険対応など、面識のない個人同士でやりとりをするのはハードルが高いと思う方もおられるかと思います。
また、貸し手が店舗の情報を公開して借り手を募集したり、借り手が借りれる店舗の情報を収集したりするのも、個人でやるには限界があるでしょう。
貸し手と借り手のマッチングサービスを提供する仲介業者さんが何社かありますので、それを利用するのが良いかと思われます。もちろん手数料がかかりますが、法的な問題や保険の対応などデメリット部分をしっかりカバーしてくれますので、安心して貸し借りができるのがポイントです。
吉野家ホールディングスが提供するマッチングサービス「シェアレストラン」
貸し手、借り手の双方がメリットを享受できるWin-Winなビジネスとして、シェアカフェを利用していただければと思います。
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